医療トピックス No.13 超高齢者の胃癌の仮想胃内視鏡検査及び仮想胃透視検査の有用性について

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超高齢者の胃癌の仮想胃内視鏡検査及び仮想胃透視検査の有用性について

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高齢者への検査の検討

高齢者への検査の検討
超高齢者(90歳以上)に胃透視や胃内視鏡を積極的に施行するか否かは議論が分かれるところである。 患者本人が検査に恐怖を抱く、寿命や認知症などで家族が検査に同意されない、検査により体調不良となる、 たとえ癌が見つかっても治療はしない、出来ないなどの理由から、本人や家族が検査に消極的になるのも事実である。
高齢者、超高齢者社会を迎え、今後、2人に1人が癌に、5人に1人が認知症に罹患すると推測され、超高齢者の胃の検査は、 可能であれば、バリウムやガストログフィンでの造影剤を服用させる胃透視や胃内視鏡(経口や経鼻)を用いずに安全で侵襲の少ない検査が望まれる。 そこで、16chマルチスライス CT ※1 による仮想胃内視鏡と胃透視検査の有用性についてretrospectiveに検討してみた。 (検査方法) ※2

【1】95歳(女性)

【1】95歳(女性)
胃角上部の後壁付近に限局した5型(胃癌の肉眼型分類)の癌の内視鏡像(図1)と仮想内視鏡像(図2)を示す。
図1-1)胃角上部の後壁付近に限局した5型(胃癌の肉眼型分類)の癌の内視鏡像図1-2)胃角上部の後壁付近に限局した5型(胃癌の肉眼型分類)の癌の内視鏡像図1-3)胃角上部の後壁付近に限局した5型(胃癌の肉眼型分類)の癌の内視鏡像
図2-1)胃角上部の後壁付近に限局した5型(胃癌の肉眼型分類)の癌の仮想内視鏡像図2-2)胃角上部の後壁付近に限局した5型(胃癌の肉眼型分類)の癌の仮想内視鏡像
赤色線 と赤色矢印( )は癌部、粘膜ひだ集中の中央部は潰瘍である。 粘膜ひだの集中、中断、棍棒状、粘膜ひだ隆起(周堤)中央部の潰瘍(陥凹)を認める。
同症例の仮想胃透視像3D【Ray sum(図3) VR(図4)】を示す。
図3-1)同症例の仮想胃透視像3D(Ray sum)図3-2)同症例の仮想胃透視像3D(Ray sum)
図4-1)同症例の仮想胃透視像3D(VR)図4-2)同症例の仮想胃透視像3D(VR)
胃角を頭部、尾部、後壁方向で画像を作成し解析すると癌部の粘膜ひだや周堤(隆起)や潰瘍を認める事が出来る。 黄色矢印( )は周堤(隆起))部、赤色矢印( )は潰瘍部(図3、図4)で、ある程度の存在診断が出来る。

【2】99歳(女性)

【2】99歳(女性)
癌は胃角小湾中心に胃の前壁と後壁及び体上部にまで存在し胃内腔の約半周を占拠する。 3型 (胃癌の肉眼型分類) ※3 の癌で、その内視鏡像(図5)と仮想内視鏡像(図6)を示す。
図5-1)3型(※胃癌の肉眼型分類)の癌で、その内視鏡像図5-2)3型(※胃癌の肉眼型分類)の癌で、その内視鏡像図5-3)3型(※胃癌の肉眼型分類)の癌で、その内視鏡像
図6-1)3型(※胃癌の肉眼型分類)の癌で、その仮想内視鏡像図6-2)3型(※胃癌の肉眼型分類)の癌で、その仮想内視鏡像
図5図6の右図は、ほぼ同様と思われる癌部(赤色矢印 )である。
同症例の仮想胃透視像3D【Ray sum(図7) VR(図8、9)】を示す。
図7-1)同症例の仮想胃透視像3D(Ray sum)図7-2)同症例の仮想胃透視像3D(Ray sum)
図8-1)同症例の仮想胃透視像3D(VR)図8-2)同症例の仮想胃透視像3D(VR)
図9)同症例の仮想胃透視像3D(VR)
図7、8左図は胃の前壁、右図は胃の後壁の癌部である。 図9は胃角小湾側(内腔)を中心に胃の前壁と後壁を占拠 (MUL領域) ※4 している癌部である。 VR 法は、Ray sum法と比較して癌の周堤や潰瘍部は明瞭である。 黄色矢印( )は癌周堤部で赤色矢印( )は潰瘍部である。 図6〜9の仮想胃内視鏡像、仮想胃透視像とも典型的な3型(潰瘍浸潤型)を示し、図5の内視鏡像とほぼ同程度のレベルの画像と思われる。

総評(まとめと所感)

総評(まとめと所感)
今回、早期胃癌については検討していないが、少なくとも進行した癌の存在診断は十分可能であり、マルチスライスCTによる仮想胃内視鏡及び胃透視検査は、 超高齢者には安全で非常に侵襲が少ない有用な検査である。 また、癌の 臨床病期 ※5 は、本人やその家族の生活支援に欠かせない指標であり、 この指標を一回のマルチスライスCT検査で短時間に把握できることは非常に有益と考える。
最近、消化管3DCTの機能が高精度となり、3DCTでの早期胃癌の診断率が内視鏡や透視と比べて同等レベルであり、 3DCTの有用性が報告されている。 さらにCTの性能、精度の高度化や解析ソフトの開発改良を行うと共にAI技術などを活用しての消化管3DCTの基礎的、 臨床的研究が加速すると思われる。

参考

参考

※1 CT …  16ch(16-channel)マルチスライスCT(日立ECLOS 16ch)

※2 検査方法 …  検査前日は夜9時くらいまでには夕食をすませ、当日朝は絶食とする。 検査前に発泡剤を服用させてCT【MPR・多断面(任意断面)再構成画像】撮影する。 仮想胃透視は、3D画像【Ray summation(Ray sum)とVolume Rendering(VR)】で、仮想胃内視鏡は、 【CEV-CPR(Cruising Eye View-Curved Planar Reconstruction)】で様々な方向から画像を作成し解析する。 (医療トピックスNo10参照)。

※3 胃癌の肉眼型分類 …  胃癌取扱い規約では肉眼型分類を0型〜5型の基本分類として表記している。

0型 表在型 病変の肉眼形態が、軽度な隆起や陥凹を示すにすぎないもの
1型 腫瘤型 明らかに隆起した形態を示し、周囲粘膜との境界が明瞭なもの
2型 潰瘍限局型 潰瘍を形成し、潰瘍をとりまく胃壁が肥厚し周堤を形成する
周堤の周囲粘膜 との境界が比較的明瞭なもの
3型 潰瘍浸潤型 潰瘍を形成し、潰瘍をとりまく胃壁が肥厚し周堤を形成するが周堤と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの
4型 びまん浸潤型 著明な潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とし、病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの
5型 分類不能 上記の0〜4型のいずれにも分類し難い形態を示すもの

※4 MUL …  胃を3等分して、U(Upper Part:上部)、M(Middle Part:中部)、L(Lower Part:下部)に区分されている。

※5 臨床病期 …  どの程度癌が進んでいるかなど癌の状態を知るための指標。
(癌の深達度、多臓器への転移、浸潤、リンパ節転移の有無などで判定する)

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